平泉会顧問 秋山 ちえ子        

                          

          【大事な時間】         

        評論家  秋山ちえ子

 年の始めに私は自分の生き方の軸にすることを考えます。
八十二歳の今年は体力にあわせて「スモール・イズ・ビューティフル」(小さいことはいいことだ)にしようときめました。
 ニュースを見ていると不安が募ります。その解決には政治や行政の努力に待つところ大です。が、私たち自身も「この国に生まれてよかった」と思える社会作りに自分の出来ることをしたいものだと思います。
「おはよう」「ありがとう」という挨拶の言葉を多くすること、ご近所の高齢者に声をかけるといった小さな親切は、その気になれば誰でもが出来ることです。しかしその気になるためには自分の心のゆとりが必要になります。
 心のゆとりとは単なる時間の多少の問題ではなく、身のまわりの美しいもの、楽しいことを感じることが出来ることが物を云うと思います。
 私のTBSラジオ「秋山ちえ子の談話室」のファンの方で、自宅の庭の雑草と呼ばれている植物に心ひかれ、摘んで、押し花にして、額にまとめて送って下さる方がいます。又、私の出す葉書にと、左下に季節毎にしゃれた小さなカットを描いて届けて下さる方もいます。
 私は心をこめてお礼状を書きますが、絵を描くこと、見ることが好きというおしゃれ心いっぱいの人、生きていることを楽しめる人との交友を大事にしたいと考えます。又、この方たちは「小さなことはいいことだ」に共鳴して、小さな良質の種をあちこちに撒いて下さると期待しているのです。
 私も絵を見るのも描くのも好きです。
ひっそりと生きていることを一人で楽しむ、心のゆとりを生み出す時間を大事にしています。

                                    第10回記念平泉展・発行
                                    「平泉」10号(1999年)より

 ■ プロフィール 

☆ 秋山ちえ子   作家

            評論家

            放送ジャーナリスト

            TBSラジオ「秋山ちえ子の談話室」

            エッセイストクラブ賞受賞

            東京文化賞受賞

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